冬のおすすめ本『眠れる美女』
- 2024年1月18日
- 読了時間: 3分
更新日:2024年2月4日
今年に入ってから、おすすめの本をInstagramで紹介するようになりました。
本来ならこうした投稿をもっとすべきだったと思います。けれども去年はイベントのお知らせで力つき、なかなか本の紹介ができず。
公私ともに落ち着いて、やっと本のことを書けるようになりました。
Instagramでは『ミザリー』と『山月記』をご紹介しました。
こちらでは、もうすこしニッチな本を取り上げたいと思います。
凍える身体をやわらかく、あたたかなものに包まれたい。
そんな方におすすめしたい小説は川端康成の『眠れる美女』です。
『眠れる美女』 あらすじ
江口老人は友人にすすめれ、とある秘密の倶楽部に参加する。すると、眠りこくる少女たちと添い寝をして一晩過ごせる海辺の館に招待された。
館を案内する女性からは「質の悪いいたずらをしないこと」と注意を受けたが、娘たちはつついたり、ゆすったりしたくらいでは目覚めないほどぐっすり寝ている。
最初はうたがいつつも、いつしかどっぷりその館にはまってしまう江口老人。
娘と枕をともにする夜を重ね、やがて老いと自分の人生について回想するようになっていく。
昨年のイベントでビブリオバトルに参加しました。紹介する本のテーマは「冬に読みたい本」ということで、取り上げたのが『眠れる美女』。
作者である川端康成の「冬の本」といえば、真っ先にあがるのは『雪国』でしょう。
でも、それではおもしろくない。
もっと深く川端の作品に触れてほしい、ノーベル文学賞を受賞した作家もこんな本を書くのだと知ってほしい。
むかしの小説といえば題材も古風で、言葉選びも堅苦しいと言われたことを払拭したくて選んだ本でした。
いやしかし、彼の作中ではよく浮気相手だの2号さんだのが登場するのです。当時は何人もと関係を持ってもめずらしいことではないのかもしれませんが、登場人物のどこかしかが三角関係になってくんずほぐれつしている。
思わず、おいおいまたかとつっこんでしまいたくなります。
おそらく川端自身が許嫁に振られたことや彼の恋愛観が影響しているのではと思います。
新潮社から2019年に出たプレミアムカバー版はとてもあざやかな水色の紙に、金色で題名が書かれていました。
はじめて手にしたときは、童話のような、やわらかな内容なのかと思ったらどうも違う……。やっぱり康成、とどこか納得してしまいました。
眠りこくる少女と老人、怪しい館。
よくないことが起きる予感しかしません。
読者を引きこむ物語の組み立てはもちろん、少女たちの身体をあらわす表現はとても豊かで、目を閉じれば暗がりに丸い肩が浮かんできます。なんだか寝息が聞こえてきそうなぐらいです。
江口老人の老いを感じさせる描写も夢幻のようなものと現実の出来事が混じり、実体のない死というものが一歩一歩近づいているように思わせてきます。
そんな巧みな言葉づかいにも、さすがと膝を打ちたくなる。川端康成のみずみずしい筆力が堪能できる作品です。
文豪と呼ばれるひとたちの本はお堅いと思われるようですが、実際はけっこう破天荒な話や、それこそ浮気ものもたくさんあります。
こういう本は読まないからと突っぱねず、どうか一度あらすじだけでも読んでもらえたらなぁと思います。